「……うぅ〜ん。どっちがいいかな?」
休日の朝早くから、私は両手に洋服を持ち、それを自分の体に交互に当てながら姿見鏡の前で唸っていた。
右手には、黒色のキャミワンピースと、その上に薄紫色で少しロング丈の、やわらかなニット天竺素材のカーディガンが掛かっている組み合わせの洋服を持っている。
キャミワンピースの、ティアードのフリルレースが可愛くて、自分の中ではかなりのお気に入りの洋服である。
これに、黒のブーツを組み合わせる予定。
そして、左手には、パープル系のチェックチュニックワンピースにボアベストを重ね、レギンスをチョイス。
これには、ファー付きの編み上げショートブーツと、ボンボン付きのニット帽を被る、という組み合わせだ。
「んん〜……」
暫く鏡の中で自分とにらめっこしていた。
そもそも、なぜこんなにも洋服の事で悩んでいるのかと言うと。
アレクさんに、今日デートをしようと誘われたからです。
先日、晴れてアレクさんの『彼女』に(ある意味強引に)なった私。
クールな見た目に反して、言葉責めや痛いのが大好き――といった性癖を持つ、M男であるアレクさん。
そんなアレクさんではあるが、何かの拍子で暴走しなければ、いつも通りのイケメン外国人な訳で……。
自分でも、かなり現金な奴だなぁ〜とは思うが、面食いな私は、初めての彼氏がアレクさんである事をかなり嬉しく感じていた。
だって、それ(Mな性癖)以外は、『顔良し、声良し、性格良し。ついでに背も高くてお金もある』という、普通だったら絶対に手の届かない人だし。
――とまぁそんな訳で、
私は今、初彼との初デートで着ていく洋服選びで、悩んでいる最中なのである。
「むぅ〜……もうこんな時間か。化粧をする時間もあるし…………よしっ! これにしよっと」
携帯の時計を見れば、家を出る時間が迫ってきていた。
私は悩みに悩んで、左手に持っていた服を着ることに決めた。
今日のデートは、私の希望で遊園地に行くことになったので、これでいいでしょう。
私は決めた服にワタワタと着替えると、中途半端にしたままのメイクを全て終わらせ、ニット帽を被った。
それからもう一度、姿見鏡で全身をチェック!
メイクOK! 髪型OK! 服装OK! 持ち物も……OK!
「――よし! それじゃあ、行きますかぁ〜」
バックを片手に玄関の鍵を持ち、私は部屋を出る。
アレクさんとの初デート。
何もかもが初めての事に、ワクワク感とちょっとした緊張感が私を包み込む。
外に出ると、今日は雲一つ無い快晴である。
私は、ルンルン気分でアレクさんとの待ち合わせ場所に向かったのであった。