皆さんお久しぶりです。
女子空手部マネージャーの、斎藤です。
僕達女子空手部が風紀委員になって、数カ月が経ちました。
あれから……いろいろありました(遠い目)。
練習試合を行うたびに常勝しているにも関わらず、校内では何故か「女子空手部」としてではなく「風紀委員」としての名前の方が確実に有名になっている皆さん達ですが、今日から数日間だけ、瑞輝主将のご実家(空手道場でもある)で合宿練習をすることになりました。
瑞輝主将のご家族がどんな人達なのか、ちょっと気になります。
一度学校に集まってから、皆で瑞輝主将のお家へと行くことになりました。
30分程バスに揺られ、更に歩くこと15分。
周りを大きな木々に囲まれた、瑞輝主将のご実家である道場に着いた。
「ただいまぁー!」
主将が道場の門から中に入り、その裏手にある極普通の大きさである家の玄関を開けながら大声をだすと。
「あらあら、おかえりなさい透ちゃん」
パタパタとスリッパの音を響かせながら、廊下の奥の方から1人の女性が僕達の方へと歩いて来た。
「うおっ! スッゲー美人!!」
そんな事を言ったのは、坊主頭になった元ボクシング部エースのリュウ先輩であった。
僕と同じマネージャーになったリュウ先輩達が、「ヤベッ、惚れそう」とか呟いていると───流れる金茶色の髪と翠色の瞳を持った、綺麗な外人さんが僕達の前に立った。
どこの国の出身か分からなかったけど、見た目30代前半のめちゃくちゃ美人な女性に言った瑞輝主将の言葉に僕達は固まることになる。
「あ、かーさん。これから道場使うから、生徒さんが来る時間になったら教えて」
一瞬、聞き間違いかと思った。
え? かーさんって?? と皆(女子空手部の皆さんを除く、男マネ全て)が主将と目の前の女性を見詰めていると、その視線に気付いた主将が、
「あぁ、この人、私のお母さん」
と綺麗なお姉さんを指さして教えてくれました。
純日本人顔&髪や目の色の主将と、目の前にいる金髪美女が親子関係ですと!?
義母かと思って聞いてみたら、実母だと言われた。
どうやら、瑞輝主将のお祖父さんが外人さんらしく、主将のお母さんはお祖父さんの血がとても濃く受け継がれたらしい。
そんなハーフなお母さんと、日本人のお父さん(色素が薄くて日本人離れな外見をしているらしい)の血を程よく混ぜ合わさって生まれてきたのが主将のお兄さん達なんだとか。
主将と双子の馨君は、おばあさんの遺伝子をそっくりそのまま受け継いだらしく、ご両親やお兄さん達と外見が全く違っていて、色や顔立ち共に純日本人である。
僕達の驚きの叫び声が、玄関に響き渡った。
目の前の女性───見た目まだ30代前半の綺麗な外人さんが、主将のお母さんだと言うことに驚きを隠せない。
しかも、こんなに若くて綺麗な人が『ママ』と呼ばれるんじゃなくて『かーさん』。
その事に、何故かショックを受ける僕達を知り目に、女子空手部の皆様が「要さん、お世話になりまぁーす!」と声を揃えて挨拶をする。
どうやら、主将のお母さんの名前は要(かなめ)さんと言うらしい。
外見とは違い、名前はもろ日本人なお母さん。
買い物に行くと、よく英語で話し掛けられるそうなのだが、英語はからっきしダメらしい。
そんなとこだけ、瑞輝主将とよく似ている。
因みに、後から知ったことなのだが……要さんは50代半ばなんだとか。
僕の母親と同年代という事実に軽いショックを受けながら、こうして合宿1日目が始まったのであった。
つづく。