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とあるメイドの日記 1

 
 私の名前はミリア。

 十貴族の中でも、上位に位置するオルグレン家に20年程仕えるメイドである。
 そんな私が仕える、オルグレン家の当主様の名前は───リュシーナ・オルグレン様、と言う。
『黒騎士』でもある当主様は、メイド達……いや、オルグレン家に仕える全ての者の誇りである。

 ───と、堅苦しい言葉はここまででいいでしょう。

 巷で今流行りの日記帳を買ってきたので、今日から日々の出来事をここに書いていこうと思います。


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 今日は、当主様───リュシーナ様が、久々に屋敷に帰って来られると、朝一に執事長から聞かされた。
 いつもより丁寧に掃除するのが面倒 お疲れのリュシーナ様が寛げるように、私達は屋敷内を綺麗にして、出迎える準備をしたわ。
 そして、夕方になってから、漸くリュシーナ様が小さな頃から使われていた『白い家』から帰って来た───のだが、主人が帰って来たと喜びながら出迎えた私達は驚きに固まった。


 孤高の塊のような方であるリュシーナ様が、見知らぬ 男性 髪が短い女性を御自分の馬に乗せている!?


 まぁ、仕事柄、驚いている事は顔には出さなかったわよ?
 でも、そんな私達の努力も、次に目にしたものに崩れ去ったわ。

 にっこり。

 あの、 表情筋が退化した 喜怒哀楽をあまり表現されないリュシーナ様が、微笑んでいる!!!
 もうビックリよ。
 20年程仕えている私だって見た事が無い柔らかな微笑みを、あの  女性に向けているんだから。
 トールと呼ばれている女性……一体何者なのかしら?


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 そうそう、メイド達の中でも1人だけ浮いている女性がここにはいる。
 その人はデュレインと言って、リュシーナ様と同じくらい 表情筋が死んでいる 表情が少ない女性。

 この人苦手なのよねぇ〜 掴み所がない人なのよね。

 なんて言うの? 私達と同じメイドなのに、リュシーナ様と同じ───人の上に立つ人間の様な威圧感を、時折感じるのよね。
 後輩メイドに、ははぁ〜っ! と頭を下げたくなっちゃうのよ。
 変でしょ?
 でも、


 あまり働かないくせに態度がでかく、愛想が悪くて、毒舌な 背をぴしっと伸ばして、 立ち姿だけが メイドの鏡の様な彼女が、意地悪なメイド長をコテンパに口で負かした時は、スッキリしたわ。


 そして、意地悪メイド長を いろんな手を使って その座から引き摺り下ろし、新たなメイド長になったわ。
 もちろん、後輩のメイドが、私達の頂点に立つメイド長になっても、誰も文句は 言えなかった 言わなかったわ。
 そんな新メイド長が、自分から進んで仕事をするようになったのよ!


 明日はきっと、槍が降って来る 素晴らしいことです。


 それよりも、リュシーナ様が連れて来た女性が、子供になって帰って来た時───私は見た!
 外に出て皆様を出迎えていたメイド長が、一瞬だけど笑ったのよ!?
 喜怒哀楽と言う表現方法を忘れたの? と言いたくなるような人達に、こんなに沢山笑顔を出させるこのトールと言う人物は……本当に何者なのか。
 明日から、この人について色々と情報収集しなければ!


 あら? 日記を書いていたら、もうこんな時間に……。
 意外と楽しいものなのね。  今日は、このくらいで日記を付けるのを終りにしましょう。


 栄えある日記の初日にして、書く事が盛り沢山で大変よろしい。
 

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