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とあるメイドの日記 3

 
 今日は メイド長が珍しく仕事をしていたので 早く仕事が終わり、いつもよりずっと早く部屋に帰って来ることが出来ました。
 今人気の恋愛小説、『美しき王様と平凡な彼女』を読む前に、日記を書いておきたいと思います。


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 リュシーナ様がお招きしたお客様───トール様は、成人した大人の方だと思っていたのですが……。
 先程、私が自室へと戻る前にトール様と話す機会があったので、御年を聞いたらまだ24歳なのだと教えて下さいました。
 常に成人 男性 女性の格好をしているので、てっきり80歳は超えていると思っていたら、まだまだ小さな子供と言う事実にビックリです。
 そんなトール様ですが、この頃小さな子供の姿で過ごされることが多くなりました。
 どうやら、ルル様がお作りになられた 不気味な 薬を飲んだ副作用なのだとか。
 しかし……小さな子供の姿で広い屋敷内を 涙目になって迷子になっている 歩き回る姿を見ると、微笑ましく感じます。


 そんなトール様を、私達メイドは 泣き顔が可愛いと 姉になった気分で見守っているのです。


 そうそう、この頃私達は、小さなお菓子やら飴やらを常にポケットに入れて持ち歩いています。
 何故なら、小さなトール様に会った時に「トール様、甘いお菓子……食べますか?」と言えば───「食べたいです!」と、大きな目をキラキラと輝かせたトール様を見ることが出来るからです!
 口いっぱいにお菓子を含み、もぐもぐと口を動かすトール様を見ていると、まるで 小動物に餌付けしている気分 心から可愛らしいと思います。
 あのメイド長が、子供用のくまたんのスプーンを持って、「はい、トール様。あーん」と言っている姿を見た時は 天変地異が起きるのではないかと思った 驚きましたが、目の前で美味しそうにお菓子を食べる姿を見れば、納得です。
 しかし……トール様の「食べ物をくれる人=良い人」と言う方程式は、間違っていると思います。
 でも、誰もその事について訂正しません。


 だって、そんな お馬鹿っぽい 所も可愛らしいんですもの♪


 さてさて、今日はこの辺で書き終わろうと思います。
 これから、気になって仕方がない『美しき王様と平凡な彼女』の読みかけ───第三章、「平凡女に新たな男の影! 輝かしい舞踏会での誘い」を見なければ!
 

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