「風紀委員!?」
「なんであたしらが…」
「そうだよぉ。普通そういうのって、各クラスから選ぶもんじゃないの?」
愛好会とよく間違われる空手部に入ってから早1ヶ月。
体育館から遠く離れた1番小さな部室。そこに、女子空手部の監督、五里(ごさと)先生――通称ゴリ先と、今年入った8人の新入部員がいた。
昼休みをのんびり過ごしていた彼女らを校内放送で呼び出したゴリ先は、ついに練習試合が決まったか? と喜ぶ部員達に、違う違う。と手を振り、こう言った。
「この頃校内の風紀が乱れているらしい。んで、校長先生様は風紀の乱れを正すべく、風紀委員を急遽立ち上げた。……が、この風紀委員の顧問をしたがる先生達が誰もいなくてなぁ。それで、新米の俺が風紀委員の顧問をする事になった」
んで、お前達は今日から風紀委員な!
などと言われても、素直に頷く彼女らではない。
「だからって、なーんであたしらがそんな事やらないといけないのよ!!」
零の言葉に、うんうんと一同が頷く。
「しょーがねーだろっ! 俺だってしたくて風紀委員なんかの顧問についたわけじゃないんだよ!!」
新米教師、ゴリ先こと五里恵一(ごさとけいいち)。先輩教師の圧力には勝てなかったらしい。
「それに、試験的にやる委員だから、お前らだけで十分たりんのっ!」
やれ! と言う監督命令に、8人はいやいやながらも、その日から風紀委員になったのだった。
「これからどうする?」
「まずは校門付近でも見回ろっか。――おーい。零、ナデ、行くよぉ」
強制的に風紀委員になった私達は、その日の昼休みからさっそく校内の見回りをする事になった。
女子だけの見回りなので、4人ずつに分かれてする事になり、私達のグループは透と零とナデの4人であった。
このナデと言う人物は本名を西条撫子(さいじょうなでしこ)という女の子らしい名前なのだが……透と同じくらい男に間違われる事が多かった。
「やってらんねぇー」
美人といえば美人なのだが……ポケットに手を突っ込み、半眼でそう呟く姿を見ると、それも仕方がないと思う。
「なぁ。あれって斉藤じゃね?」
玄関で靴を履き替えて校門まで歩いている途中、突然ナデがそう言った。
皆でナデが見てる方向に顔を向けると――。
「早く金だせよ」
「テメェー。何1万しか持って来てねぇーんだよぉ!」
「5万はもってこいよ、バーカ」
1年の男子生徒が先輩達に囲まれ、カツアゲされている所だった。
「あちゃー。確かに、あれってうちのクラスの斉藤じゃん。……透ちゃん、どうする?」
「うちら風紀委員だし、助けないわけにはいかんわな」
「えー! マジで行くの!?」
「マジです。さっ、行くよ」
透のこの一言で、先輩達にたかられ中の斉藤を救出すべく、私達は彼らの輪に進んでいった。
「はぁーっ……こんな事になんなら、斉藤なんか見つけんじゃなかった。……マジでやってらんねぇ」
ナデが心底嫌そうに、そう呟いた。