高校生編・恐怖の風紀委員 7

 
 辺りは騒然としていた。
 見た事も無い1年の女子が、2年のボクシング部――しかも、かなり強いと有名な人達をこうも簡単に倒してしまうとは……と。
 周りの視線が透達に集まる。


「せーんぱい。約束覚えてますぅ?」


 そんな周りの視線を気にする事も無く、零が腰に手を当てながらニヤニヤとした顔で先輩達を見ながらそう言った。
「約束?」
 まさか、年下の――しかも女に負けるとは思ってもみなかったであろう先輩達は、零の顔を見ながら聞き返す。
「そっ。先輩達が負けたら斉藤に今後一切関わらないって約束」
 その言葉に、先輩達は苦虫を噛み潰したような顔をした。


 くそっ、せっかくのいいカモが……


 そう言いたげな顔をする先輩達。
「チッ、わぁーったよ。そこのチビ助には今後一切関わんねぇーよ」
 試合に参加しなかった先輩が、未だに蹲っているリュウ先輩を立たせながらそう言った。
 少し離れた所でその言葉を聞いた斉藤は、ホッとした様に胸に手を当てている。
「よかったね、斉藤」
「う、うん。ありがとう、瑞輝さん」
「いやいや、私は何もやってないよ。助けたのは透ちゃんとナデだしね」
 斉藤が透とナデにペコペコと頭を下げていた。
 そんなやり取りをしていたら、先輩達が舌打ちした。
「もういいだろう。……んじゃな」


「ちょっとまてぇーいっ」


 まだよろよろとしているリュウ先輩とカズ先輩を連れ、人だかりを抜けようとしていた先輩達を呼び止めたハナ先。
 まさかハナ先に呼び止められるとは思っていなかった彼らは、不審な顔をしながら振り向く。
「なんだよ」
「おい、お前らはそのまま生徒指導室に来い」
「……何でだよ」
「何でって、お前らはそこの1年坊主から金を巻き上げようとしてたんだろ?」
 竹刀で肩を叩きながら、ハナ先は先輩達を睨みつける。
「それを、そこにいる風紀委員の女子が止めたのに、お前らが喧嘩を吹っ掛けたらしいじゃないか」
「はぁ? 元はと言えば――」
 ハナ先の言葉に先輩達が何か反論しようとするも、バシッと竹刀が地面を叩く音によって遮られる。
「まぁ、何か言いたい事があるなら、指導室で聞こうじゃないか」


 それから、ハナ先の「もうすぐ予鈴が鳴るぞ、教室に戻れ。解散!」と言う怒鳴り声で、私達もその場を離れて教室に帰ったのであった。

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