高校生編・恐怖の風紀委員 4

 
「おいっ、手加減してやれよ?」
 1歩前に出たリーダーが、隣に並んだロン毛にそう言った。
「わかってるって。こんな見た目でも一応女なんだし、手加減するって」

「「………………」」

 2人を見てニヤニヤする男共が何を言っても、透とナデは反応しなかった。
 それどころか、腕を組んで「まだですかぁ?」と余裕顔。
「はっ! お前ら、そんな態度を取ってられんのも、今のうちだぜ?」
「そうそう、何て言ったってこの2人、ボクシング部の次期キャプテン候補に上がってるんだからな」
「それに、去年は県大会のベスト4までになった、つわものだぞ?」
「あんまり、顔を狙うなよ〜」
「見られない顔になったら可哀想だしなぁ」

 お前らなんか3分も掛からないで倒される、と豪語する先輩達に、零は溜息を吐いた。
「たかだか県大会のベスト4ぐらいで、透ちゃんとナデを3分で倒せると思っているなんて……」

   馬鹿じゃない?

 と言う零の言葉に、私もウンウンと頷いた。
 なんって命知らずな奴らなんだ――と。

 知らないって怖い事なんだな。

 そうは思うが、透と零については、それも仕方がないと思う。
 彼女達は中学を卒業するまで、学校が終わると真っ直ぐ透の実家の空手道場に行き、透のお祖母さんや親にミッチリしごかれていたのだ。
 知らないのもしょうがない……。
 だから、中学時代は部活に入る事が出来ず、彼女達の強さが知られる事が無かったのだ。
 だが今回、透と零は、高校は部活に入って皆と高校生活をエンジョイ(?)したいとお祖母さん達に言ったらしい。
「全国優勝出来なかったら辞める」とかなんとか、凄い条件を取りつけてなんとか許可をもらって今に至る。
 軽〜く『全国優勝』なんて言える透に、県大会でも優勝できない奴が勝てるわけが無いのだ。

「そんじゃ、そちらの準備も整ったようですし、始めますか」
 周りに人が徐々に集まっていく中、ナデが不敵に笑う。
「よろしくお願いします」
 透がゆっくりと頭を下げた。

 それが、試合の始まりの合図だった。

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